「記憶のかけら」  時・イメージ・言葉

知らないふうに


きらきらと
笑っている

悲しみなんか
知らないふうに

希望に
あふれている

幸せしか
知らないふうに

鳥みたいに
空を舞う

恐れなんて
知らないふうに


歌だけが遺っている


歌だけが
ここに
遺っている

歌っていた
あなたは
もういないのに

まるで
あなたが
いるかのように

歌だけが
ここに
遺っている



ずっと旅の途中


見慣れぬ
風景

馴染まぬ
習慣

今は
旅の途中

短い
滞在

癒されぬ
孤独

まだ
旅の途中

持て余す
不安

とろける
憂鬱

ずっと
旅の途中


残された自由を


 新型コロナウイルスの突然の来襲から、もうどれくらいがたったでしょうか。
 日に日に報道は緊迫感を増し、いよいよ長丁場を覚悟をしなくてはならないようです。

 あれやこれや行動が制限され、それはそれでストレスではありますが、一番の不安は終わりが見えないことのような気がしています。
 もとより行動的な人間ではないので、実際の生活がそれほど大きく変わったわけでありませんが、それでもこの窮屈感はじわじわと堪えてきます。自由を担保されているということが、どれほど重要かを改めて感じる日々です。

 買い物に出ると、いろいろなマスクをかけた人を目にします。
 日ごろは清潔感を感じる白いマスクが、言葉も自由も息さえも封じ込める、不自由な日々の象徴のように感じられて、ちょっと暗澹たる気持ちになったりします。
 逆に、かわいい柄のマスクを見ると、それが子どもっぽい柄であっても、ホッと気持ちが癒されます。何とか生活を楽しもうとする人々の逞しさや、残された自由をそこに感じるからでしょうか。

 たかがマスク、されどマスク。
 見えない終わりに目をこらし疲れ果ててしまわないためにも、残された自由を失わないためにも、私もちょっとマスクに細工をほどこしてみました。
 家にあった不織布のようなペーパーナプキンで、いつもの白いマスクをおおって、10分ほどで作った即席の模様入りマスクです。
 些細なことですが、ほんのちょっとだけ気分が華やぎます。
     マスク背景透過中小
 アベノマスクの評判はよくないようですが、ワンポイントで刺繍などするには不織布のマスクよりも応用がきくかもしれません。昔、祖母がガーゼのハンカチの回りにあまったレース糸でふちどりをしてくれて、とても嬉しかったことなども思い出されます。

 諦めないとならないこともたくさんありますが、この生活を受け入れつつ、その中に楽しみを見つけていければと考えています。
 きっと私たちが一番失ってはいけないものは希望なのだと思います。楽しみや、喜びは、ささやかなものでも、希望を支えてくれる大きな力なのかもしれません。


待ち焦がれながら


昨日も
扉をたたいてみた

一昨日も
扉をたたいてみた

一昨々日さきおおとい
扉をたたいた


その前も
その前も

そっと
そっと

おそる
おそる


すぐに戻るって
言っていたのに

すぐに戻るって
思っていたのに


どこまで
行ったんだろう

どこに
いるんだろう


戻ってくるのを
待ち焦がれながら

扉が開くのを
待ち焦がれながら


今日も
扉をたたいてみる

明日も
扉をたたいてみる

明後日あさって
扉をたたいてみよう


その次も
その次も

いつも
いつも

ずっと
ずっと